中央政府はいくつかの理由のためほぼ普遍的に自治権の要求に応じることを渋ります。まず第一に彼らは自治権の少数民族への付与は結果的に起こりうる地域の脱退への第一段階なりうることです。第二に自治権のある地域への付与は他の住民や集団に対する差別として受け止められる可能性があることです。第三に自治権は特定の少数民族と関連のある外国による介入リスクを増加させることです。[128]コーネルによると「自治権」という用語を「国家による、名義上の民族集団の多数派住民との違いによる理由で国家から分離することなく特別な地位と権利、自身の政府機関をもつことが法的に付与された定義された領域である。」[129] クリミアの場合、ロシア人とタタール人が名義上の民族集団でありウクライナが国家となります。
クリミアが現在自治権をすでに保持している事実を考慮すると上記の3つのリスクを相殺している何らかの理由があるはずです。第四章では歴史的視点からクリミア自治のケースにおいてこの3つリスクを緩和する理由を調査します。いったい自治権の付与という地位はクリミアにとってよい解決手段なのでしょうか。第四章は以下のような問いにも回答します。ソビエト連邦崩壊後3つのリスクにもかかわらずクリミアはどのようにして新しい独立国家ウクライナに統合されていったのだろうか?クリミア自治は中央政府へどのような影響を及ぼしたのだろうか?これらの問いに回答を与えるため、第四章はクリミアの歴史、民族構成、ソビエト連邦崩壊後のクリミアの地位、ロシアや 欧州安全保障協力機構(OSCE)などの関与を取り扱います。
[128] Cornell, S. E. (2002a). pp.246-247
[129] Cornell, S. E. (2002b). pp.8-9
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