このウクライナにおけるENPの実体とこの章で議論したEUコンディショナリティーの特徴に従って、この節ではウクライナがEU加盟国と比べてどの程度EUの定める基準を満たしているのかを欧州委員会の発行する進捗報告書と共に計測することを試みます。1993年6月のコペンハーゲンサミットは重要となる第七章a-iii節にて以下のように結論づけています。
EU加盟は民主主義、法の支配、人権、少数民族の権利保護に対する配慮、市場経済が機能していること及びEU内の市場競争に耐えうる能力を保証する政府機関の安定を加盟候補国に要求します。加盟はEUの政治的、経済的、金融的な統合目的を厳守することを含む加盟国としての義務を果たす能力を加盟候補国が有していることを前提としています。[204]コペンハーゲン基準は主に政府機構の発達と統治能力についての一定の水準について言及しています。世界銀行によって提供される世界統治能力指標[205]はこの一定の水準を計測することに役立ちます。世界統治能力指標は世界中の212カ国の各政府指標を総合したものです。データは英エコノミスト・インテリジェンスユニットや米国国務省などのシンクタンク、非政府機関、国際・政府機関などの多様な調査機関より集められています。世界統治指標による指標は「市民の声と説明責任」、「政治的安定と暴力・テロリズムの不在」、「政府による統治能力」、「規制の品質」、「法の支配」、「汚職の取締」という6つの統治に関する側面を提供します。これら6つの指標は独立的な視点から統治に関する客観的な評価を与え、コペンハーゲン基準が言及した民主主義の保証、法の支配、人権、市場経済の機能という領域をカバーするものです。このような理由により、ウクライナとEU加盟国の統治に関する品質を世界統治指標によって分析することは妥当で有益なことといえるでしょう。
もしコペンハーゲン基準とアキ・コミュノテールの採択を実行することがEU加盟国の政府機関の統治能力を標準化し、一定の水準の統治能力を保証するのであれば、世界統治指標ではEU加盟国における指標水準のある程度の一致を観測し、アキ・コミュノテールで謳われる水準に満たないウクライナの統治能力はEU加盟国の最低水準を大きく下回るはずです。この考えに従い、ウクライナの統治能力とEU加盟国の最低水準の統治能力の間の距離を計測するため、各指標をウクライナと2009年の最低水準のEU加盟国5カ国について見てみることにしましょう。またEU・ウクライナのアクションプランで計画された期間およびユーシェンコ政権の期間である2004年から2009年の範囲で比較を行います。
世界統治能力指標は標準化された-2.5から+2.5の範囲での単位によって計測され、高い値がよい統治能力を有することに一致します。この節を執筆している2010年12月現在、最新の世界統治能力指標は2010年9月に発表された2009年の情報です。
[202] Sasse, G. (2008). p.302
[203] Ibid. p.308
[204] European Union. (1993, 06 22). EUROPEAN COUNCIL IN COPENHAGEN - 21-22 JUNE 1993- CONCLUSIONS OF THE PRESIDENCY -.
[205] The World Bank Group. (2010). The Worldwide Governance Indicators (WGI) project, Kaufmann, D., Kraay, A., & Mastruzzi, M. (2010). The Worldwide Governance Indicators: Methodology and Analytical Issues.
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