第五章で議論してきたとおり、ウクライナにとって欧州化の枠組みの中で自国の発展を続けることは避けて通ることができないのです。EU東方拡大の結果、EUとの新しい境界はウクライナにENPを通じたEUとの新しい関係を構築することを生じさせました。EU東方拡大とその結果としてのENPはウクライナの発展にとって重大な影響を与えているのです。
EUとウクライナの関係はENPの枠組みにおけるコンディショナリティーによって説明することができます。EUはコンディショナリティーを利用してその強大な影響力を近隣諸国へ行使してきました。コンディショナリティーの特性は強く豊かなEUと弱く貧窮したウクライナとの間に成り立つ力の非対称性を示しています。ウクライナのENP参加はウクライナがEUの規範をベストプラクティスとして認識していることを暗に示しています。よってたとえEUによる指示が内政不干渉の原則を侵害してウクライナにとって最良の国益とならないかもしれなくてもEU加盟国の発展水準へ追いつくために、ENP加盟国としてのウクライナはEUの規範を採択しなければならないことを意味します。EUの強大な影響力とEUコンディショナリティーを通じた規範的なEUの権力はEU・ウクライナ関係における顕著な特徴です。この意味においてEUの責任はとても重大なのでその政策は首尾一貫しているべきなのです。
ENPの成果としてのコンディショナリティーの有効性は限られたものです。欧州委員会の進捗報告書が指摘するように、ウクライナ政府内の権力の分離はアクションプランの実行に優先権を与えませんでした。EUコンディショナリティーは一国がEUの規範をベストプラクティスとしての認識している場合によく機能することを考慮すると、ウクライナ政権内の権力闘争がウクライナのアクションプラン履行を邪魔することになりました。さらに世界統治能力指標はアクションプランが完全に履行されず、2004年から2009年にかけてウクライナの発展がのろのろ浮き沈みしたというコンディショナリティーの限界を示唆しています。また世界統治能力指標はウクライナの統治能力水準とEU加盟国最低水準であるルーマニアとブルガリア両国の統治能力水準との間には大きな隔たりがあることを示しました。ウクライナのEU基準への接近は時間がかかりそうですが、ENPの枠組下での連合協定へのウクライナの参加は自国の発展のためにEUコンディショナリティーの影響下でウクライナがEUの指示に従うことを表しています。ウクライナは21世紀における発展を欧州化の波を通じて続けていくのです。
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目次
はじめに 1.序論 2. ロシアとしてのソビエト連邦との歴史的関係 2.1 ウクライナ国家の形成とその余波 2.1.1中央ラーダとウニヴェルサール 2.1.2 ヘトマン 2.1.3内戦とディレクトーリヤ 2.2 ウクライナ・ソビエト社会主義共和国の成立...
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